カウボーイの馬が飲んでる最中に逃げないワケ
古い西部劇には、馬に乗ったカウボーイが酒場にやってきて、馬をつなぎとめるのにロープを柵にクルクルっと回して一杯やるというシーンがあった。結ぶでもなく、ただクルクルっとやるだけ。
あれで本当に馬がつなぎとめられるのか、考える。
(この問題、ヤフーの質問で見かけたりするけど、いきなり「オイラーのベルト理論」とかいう高尚な結果から解答が始まってたから、ちゃんと基礎から導いてみる。)
ロープと柵との静止摩擦係数をμとし、図に示したようにロープの微小部分に着目する。
微小部分は、角度θの点で微小角dθに相当する部分である。
B点での張力をT、C点での張力をT’、ロープの微小部分での摩擦力をμdRとする。
(最大静止摩擦力は、静止摩擦係数×垂直抗力)
馬がロープを引っ張って、まさにロープが滑りだす寸前での力のつり合いの式を、ロープのC点で考えると、つぎのようになる。
T’=T+μdR ①
ロープの微小部分が中心方向から受ける垂直抗力dRは、
dR=T’sin(dθ)≒T’dθ ②
(ここで、角度が小さい時の近似式、sin(dθ)≒dθを用いた。)
すると、①はつぎのように変形できる。
T’-T=μdR
T’-T=dTと置き換えて、
dT=μdR
②を用いると、
dT=T’μdθ
両辺が1次の微分だから、T’の2次以上の微小量を無視すれば、T’はTと置き換えられるから、
dT=Tμdθ
dT/T=μdθ
θ=0でT0、θ=θ1でT1として、両辺を定積分すれば、
log(T1/T0)=μθ1
よって、T1/T0=exp(μθ1) ③
(③式を、オイラーのベルト理論というそうです)
実際に数値を入れてみる。
ロープを2回巻いたとすると、θ1は4π。摩擦係数μを0.5とすると、μθ1が6.3。
すると③式からT1/T0はおよそ500くらい。つまり、A点から垂れているロープの重さの500倍くらいの力に耐えることができる。馬の体重が300kgくらいだとすれば、A点から垂れているロープの重さが0.6kgもあれば、ロープを2回転半くらい巻いておけば、十分に馬をつなぎとめておくことができる。